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 呟いて、窓の外を見る。休憩時間なので外を生徒がたくさん歩いている。中庭で昼飯を食べる奴もいた。眩しいくらいの光に、俺は目が眩みそうになり瞼を閉じる。ああ、なんて運命は悪戯にも俺と巧を引き合わせてしまったのか、と考える。 会わなければこんな辛い思いも無かった。 …でも、こんなに愛しいと思うことも無かったのだろう。 せめぎ合う心の中に、俺は鋭い痛みを感じて項垂れた。 気分が悪くなり授業中外に出る。 それはエスケープの常套手段だった。廊下を歩いて自分の寮に向かう。途中、噴水の水しぶきが頬にかかりひんやりと心地いい。太陽にかざすと、小さな虹が出て俺は少し得をしたような心持になる。 とぼとぼと歩いていると、いきなり噴水の端に手を引っ張られる。 「…よう」 「あ…」 そこには、白い仕事着を着た巧が、いた。 「ここで待ってたら会えるかと思って」 パンを扱うにはこの制服じゃないとダメなんだ、と巧は言う。 俺は、突然の事に顔を背けた。対応しきれない。心臓が破裂しそうに脈打っていた。 「…なんで、来たんだよ」 思ってもいない言葉が俺の口から出て行く。 「こんなトコ、来たって…何も出来や、しない」 「へー、そーなの?」 「お前が来たところで何にもならねーんだって」 巧は笑う。 「何切羽詰まってんだよ。ったく」 俺は苛立ちを隠せず、言う。 「お前に、何がー」 「はいはい。うるせーから」 刹那、巧の薄い唇が俺の唇に重なる。 言葉を吐こうとした俺の口腔に、すぐ舌が滑りこんでくる。失った言葉の代わりに、俺は吐息を吐き出す。 「う…ん…はァっ…」 舌先が絡まって、お互いのざらついた感触を楽しむ。優しく舐めとられていく感覚。いつの間にか腕の中に囚われている自分。 「ねえ、さっき巧、って呼んでたじゃん。アレ、いいなァ。もう一度、呼んでよ」 「そんな…ことっ」 「聴きたい。お前の声で、聴かせてよ」 巧の低い声が、俺の心に染み入る。俺は、待っていたはずだ。こいつがここから攫ってくれるのを… 「た…」 じっと、辛そうに巧は俺を見る。 「巧」 俺が名前を呼ぶと、ぎゅっと抱きしめられる。茶色の髪の毛が、ふわふわと俺の鼻先を掠める。 「…会いたかった」 「…!」
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