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「しかも、会ってたアイツ…あれは、βだったはずだ」
「…」
「βとの単独接触は禁止、のはずだろ?Ωの西岡先輩」
俺は黙っていた。
下手に刺激すると巧に迷惑がかかるかもしれない。
「別に俺だってアンタの事追い回したくはない。全部田島先生ですよ。全く、あんないい先生に心配かけるとは、罪な生徒ですね」
何だって?田島先生が、俺の事を…
「俺はそんな事望んじゃいない」
「自覚がないなあ。Ωってのはそういう存在なんだよ。すべての男を狂わす。それが先公だろうが生徒だろうが、パン屋だろうが関係ない。そうだろ?」
気持ちいいだろう、と堀は言う。
「すべての男がアンタに虜になっていくんだぜ、さぞかし気持ちいいだろうな」
グイ、と顎を掴まれ、堀は俺に挑発的な目で睨んでくる。
「その眼。Ωの中でもこんな跳ねっ返りは中々いない。上玉、ってのは西岡さんみたいなΩに使う言葉ですよ」
余りにも屈辱的な言葉に、俺は心が滾るのを感じる。悔しい。完璧に俺の事を家畜か何かとしか見ていない。
「くそヤローが」
俺が吐いた言葉に、堀はまた高い声で笑う。堀の手が、俺の制服のブラウスのボタンを外していっていた。
「こないだは先生とどうやってしたんです?乳首から舐められましたか?」
露になった乳首に、指を這わしてくる堀。それを避けて、俺は堀の頬に一発拳を放った。
「いい加減にしろ。それ以上は黙ってねェぞ」
「はは」
まだ殴られても笑っている堀は普通では無かった。コイツの脳みそはどうなっているのだろう。
「やっぱり。あの茶髪の兄ちゃんと俺とは態度が違う」
俺はここまでしてハッと気づく。もしかして、試されていた…?
唇を拭う堀。口の中から出血しているようだった。
「喧嘩強そうですねェ」
ま、いいもの見せてもらいました、と堀は言う。
しまった。もう遅い。巧の時と同じように、キスに応じれば良かったのか?
「いい報告ができそうですよ」
堀は呟くと、ガラガラと引き戸を開けた。そこには、北原の姿があった。
「あ…堀君?…西岡君まで」
俺はああ、と返事をした。
「一寸、使わせてもらいました」
北原は戸惑うようにああ、と気のない返事をする。俺ははだけた前を直して、堀に続いて指導室を出た。
クラスに戻ると、田島先生がいた。
「よお、歩」
「あ…」
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