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エスケープせずに授業を受けていると色々と気づいたものがあった。 俺たちはおそらく何かの宗教を基盤に教育を受けさせられていた。俺たちのようなΩ、ようは人を誘惑し狂わせるような人間は宗教で縛るのが一番手っ取り早い、という訳だろう。そして早々にαと番を作り、不特定多数と交尾できなくする、といった具合だろうか。そこには人権も、βの存在もかき消されていたのだ。 αとΩしか許されない、鉄の掟。 それを順守させるべく、この学校は存在していた。 反吐が出る、と唾を吐くのは簡単だった。でも、巧が迎えに来てくれた時点で、俺の心は変わっていた。あと少しで、ここから出れるなら俺は、まともに教育を受けてみよう、と思う。そう思わせたのは田島先生の存在も多少はあった。自分が受けた恩を返せないけれど、このくらい、最後くらいはしっかり授業を受けていよう。それが反逆の種になろうとも。精一杯の生徒としての気持だった。 俺は、どうしようもないΩだけれど。 αと番になるはずなのに、何故か惚れたのはβだったけれど。 これでも正解なんだと、証明してみせるよ。 言葉では語れなかった想いを、俺はそっと心の中でつぶやいた。  夕方の移動教室が終わると、空はオレンジ色に染まって、とても綺麗だった。ぞろぞろと生徒たちが寮に帰っていく中、俺は帰宅をずらそうと考えていた。 これから巧に会うってのに、生徒に見られては困る。いつも忙しそうな北原は、まだ生徒会の資料をまとめていないらしく、多量に紙を机に並べていた。 「何これ。どーすんの」 「西岡君、もしかして手伝ってくれる…とか?」 「ああ、別にやってもいいぜ」 「助かるよ。明日までに作らなきゃいけないけど、皆帰ってしまって。まあ、いつも僕一人でやってる事が多いんだけどね」 プリントは10種類あって、それを一つずつ順番に並べ、一枚ずつ取っていく。そのまま重ね、最終的にはホチキスで留めるのだ。 「これさ、何部作るの」 「全校生徒だから、500部かな…」 「正気の沙汰じゃねえな」 手際が悪い、と俺は言った。 「クラスのみんなに手伝ってもらえばこんなのすぐ終わったのに」 「いいんだ。僕はこういう仕事が似合ってるから」
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