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急いで残りの階段を駆け下りる。そこには北原のカバンが置いてあるだけだった。ガラガラと引き戸が閉まる音。俺は音を頼りに廊下を走っていく。その突き当りの部屋からガタガタと音がしているのを俺は聞き逃さなかった。ガラッと思い切りドアを開ける。そこには、口を抑え込まれ、複数の男子生徒に羽交い絞めにされている北原がいた。 「んー!んんっ…」 何かを言おうとしているが言葉になっていない。  「北原!」 「ひゅー、やっとヒロインの登場?Ωクラスの美人ヤンキー西岡君」 見た記憶のあるαクラスの奴らだった。 「色っぽいΩの二人が夜まで残ってるっていうからさ…可愛がってあげようと思って」 ガタイのいい、いかにも自信たっぷりのαが言う。コイツはいつも、合同授業でも余裕たっぷりで、俺はその不遜な態度が嫌であまり関わらないようにしていた。 「…ふざけるのもいい加減にしろよ」 絞り出した言葉を、ケラケラと笑って来る。 この部屋にはこいつの他に三人、αが存在していた。 「西岡君、野良猫みたいで可愛いね…北原君も一緒に可愛がってあげるよ」  もう一人の長髪のおとなしそうな男が囁いてくる。近づいて俺の肩に触れるので触るな、と強く言い放った。 「そーんなに怖がらなくていいんだよ。まさか、処女じゃないでしょ?その色気でね~、やってるでしょ?」 卑猥に指で穴を作りそこにもう一方の指を通し俺に見せつけてくる。こいつらいったいどういうつもりなのだろう。俺達を待ち伏せしやがったのか… 「俺、西岡君に悪戯したくてさ。毎日夢に出てくんの。合同授業とかマジ拷問だよね。君みたいな子が居たら、襲いたくなるよ…」 髪の毛に触れられて、俺は背筋が凍る。 「やめろ。そいつを離せよ」 「それはできないなあ」 クスクス笑って余裕の表情を見せるαたち。 北原は猿轡のように布を咥えさせられ、後ろ手に結わかれているようだった。どうしよう。どうしたらいい…?巧、お前ならどうする? ガタイのいい男が、ずい、と前に出る。俺は冷や汗をかきながらそいつの出方を伺う。 「へえ。度胸あるじゃん。男四人相手にして、さ」 「こんなことがばれたらお前らここにはいられないだろ?悪いことは言わねェ。早くそいつを離せよ」  「はは。面白いこと言うね。ばれないよ。ばれないんだよ、俺たちは」 怪訝な顔でそいつらを見る。いったいどういうことだ…
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