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北原の言った穢れ、と言う言葉が何を意味しているのか俺には分からなかった。穢れとは、俺たちの性欲なのだろうか。 「お前も、性欲に振り回されたことがあるんだな」 北原は笑った。 「振り回されない奴なんているのか?見てみたいもんだよ。あんな、強烈に犯されても喜んでいる自分を、許せる奴がいるのか知れないよ」 もうたくさんだ、と奴は言った。 そうか、俺は運がいいのかもしれない。喧嘩のあの時も、あの教師に犯されそうなときも、助けてもらったんだ。 そう、手塚巧に。 強烈なアイツの存在に、俺は胸の奥が苦しくなる。βのアイツに、何故俺は惹かれるのか?もしαがβに恋していけないのなら、恋せない体にして欲しかった。罵られてもいい、それでも俺は手塚を選ぶだろう。俺にはもう、あいつの存在が焼き印の様に強烈にインプットされている。 「βとしたことあるのか」 北原は唇を噛む。そのしぐさはまるで子供のようだった。意外と幼い学級委員長に俺はほくそ笑む。 「俺の意志じゃない。βは最悪だ。あんな奴らに抱かれたかと思うと反吐が出る」 この言い方だと、最悪な体験をしたようだ。が、北原は一点を見つめてぶつくさと独り言を言っている。なんとも不思議な奴に見えた。 「俺は…犠牲者じゃない…俺が掴むんだ…幸せを…」 俺は雲行きが怪しくなってきたので北原を外に出す。こんな奴とは話していられない。トラウマの所為でイっちまっている。表情硬く、外に出てとぼとぼと自室へ帰る北原はまるで操り人形のように無表情だった。アイツにも色々と考えがあるのだろう。 俺は犯されていたとしても、手塚の事が好きだっただろうか。それがレイプだったとしても?他の男に抱かれていても、手塚は俺を抱いただろうか。 様々にこんがらがった自分の思考回路をまとめられなくて、俺は悩みながら微睡む。どのくらい夜を超えれば、手塚に会えるのだろうか。会ったら、俺を軽蔑するだろうか。また抱きしめるだろうか。 『西岡』 頭の中で描いた手塚の夢はとてもエロティックで、俺は満足して部屋で眠りについた。 どうか、今は。 抱かれた俺が可哀そうだったとは思いたくなかった。俺は自分の意志で、手塚に抱かれたのだ。決して、Ωの本能ではない、そう思いたかった。
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