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お前らの匂いは雌の匂い。 俺達Ωによく言われる言葉だった。 雄なのか雌なのか、と問われると自分でもよくわからない。俺たちは一体、何のためにこんな体なのだろう。上空にある白い雲を見つめて、俺はぼんやりと掴み損った銀色を、想う。 Ωの俺たちは何処までも、運命に翻弄されてしまうのだろう。 高く白い壁に囲まれて、Ωの生徒は従順に誰にでも従う。十七にもなってΩに目覚めるのは珍しい。 俺はこのΩのクラスでも目覚めたのは圧倒的に遅かった。皆、もっと幼いころからΩに目覚め、虐げられ、傷ついてきた。そんな目をしている。そんな奴らの中、俺は一人くせっ毛の事を想って遠くに気持ちを馳せていた。 中庭の芝生で、俺は寝転がる。いつものように、休み時間の過ごし方は何ら変わらない。それはどこの高校に行っても同じなのだろう。俺の性癖、というやつだった。煙草をふかしたいが、この恐ろしく透き通った雰囲気の学校の中は、そんな煙も持ち出せないほど清浄だった。 清浄、というのは聞こえはいいが、時には恐ろしく見えることもある。こんな性欲を隠せない俺達Ωを閉じ込めて、奇麗にしようという考えがまず胡散臭い。俺は心底この学校に来たことを後悔した。 でもここでしか俺は居場所がないのも事実だった。 舌打ちを一つして、俺は教室へ戻る。 ここでの授業は、普通の授業に加えて、Ωの教師による性欲のコントロール法やセックスに対する考え方の矯正などの性教育が入ってくる。とんだ内容の授業だったが、ここはきっと、俺達Ωにとっての監獄のようなものなのだろう。風紀を乱すΩを教育し、更生させる施設。高校なんて言葉は全くと言っていいほどこの建物には似合わなかった。 教室に入ると、乾いた空気が俺を包む。もうとっくに授業は始まっていて、それを横目に席に着く。教師が何か言っている気がするが、俺には全くと言っていいほど届かない。まるで心が無くなってしまったかのように何も感じない心を嘲笑っている自分が、いた。 窓際の隅っこの席が好きだ。以前から窓際を選んでいたので、当然と言っていいほど俺はこの席に固執した。窓から外を見ていても全く違う景色に見える。今の俺たちは、籠の中の鳥のような存在でしかない。籠の中から外に羽ばたきたい鳥のように、俺たちはきっと、自由を夢見ている。
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