第四話 不老不死

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俺らはあまり壊れていない家を今日の宿に決め、使えるものなどを探していた。 「そういえばお前の言っていた能力とはなんだ?」 俺は先程彼女が言っていた能力とに関して質問をした。 質問を投げかけるとあろうことか、彼女は落ちていた鋭いガラスの破片で自分の掌を斬り裂いたのだ。 飛び散る血と細々した肉片。見るからに傷口は深かった。 治癒魔法でも傷が塞がるかどうか分からないほど深い。 俺は少女の行動に驚きながらも、咄嗟に治癒魔法を使おうとするが、何故か彼女に止められた。 少女は、傷つけた掌を胸元へと持っていくと、魔力を集中させていた。 「何をしてるんだ。早く止めないと出血多量で……」 驚いていると、少女の傷口は眩しい光に包まれ、次第に塞がっていった。 それは俺ですら見たことのなかった魔法だった。 治癒魔法というものがあるが、それとは大分違っていた。 「今のはなんだ! 治癒魔法なのか?」 「いいえ、今のは私の生まれながらにして持っている能力、不老不死の力です」 「不老不死……物語の中でしか聞いたことがなかったが、こういうものなのか」 不気味に思いながらも俺は、彼女が自ら傷をつけた掌をジロジロと眺めていた。 「ところで貴方のお名前は」 「あ……。俺は今、クロム・オールドと名乗ってる」 「クロム…………私の名前はエヴァン」 「それがお前の名か? いい名だな」 俺が不意に微笑みかければ、何故か彼女は頬を赤らめ、目線を逸らしてしまった。 「今日は冷える。それでも着て暖を取れ」 「あ、ありがとう……ございます」 「ずっと独りだったのか?」 コクリと頷くエヴァン。 すぐに彼女は、俺が貸したコートを羽織り、暖を取り始めた。 沈黙が続く中、エヴァンは俺にある質問をした。 「あの国は貴方の国なの?」 エスポワールの話をされ、俺は表情を少し暗くした。 けど気にされないように、直ぐに表情を変え、質問に答える。 「あぁ、俺の国だった」 「そう……」 「滅ぼされたんだ十年前に。俺は奇跡的に家臣や護衛兵等と一緒に国を出れたが、父や母は」 「辛かったわね」 エヴァンは優しく俺の頭を撫でた。まるで小さい子供をあやす様に優しく。 彼女の行動に俺は目を大きく開け、驚いたような表情をした。 そんな俺の表情にエヴァンはクスリと笑った。 その笑顔は今まで見た何よりも美しかった。 「私、初めてこんなに笑いました。まだ早いと思いますが、貴方と会えて良かったです」 初めて。という言葉が突っかかるが、それでも楽しそうでよかったと俺は思った。
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