100歳のトムテ

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 ニコの頬を伝う涙を拭ってあげながら、昔ニコのために歌った子守唄を歌う。  ニコは僕を見て嬉しそうに二度、三度瞬きをして。  そのまま微笑むように眠るのを僕だけが看取った。  僕とニコが一緒に生まれた100年前と同じ日の朝だった。  旅立っていくニコの部屋の隣で。  元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえた。  10人目のヴァイドラー家の赤ちゃんは、男の子のようだよ、ニコ。  僕はまたお仕事に戻らなくちゃいけない。  じゃあね、ニコ。  眠るニコの頬にキスをして僕は生まれて初めて自分の涙を拭いた。 【Sleep tight,Nico.】
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