『ぷろねたりあーさん』その1

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『ぷろねたりあーさん』その1

  《このお話は、フィクションです。あらゆるものが、架空の存在です。》    やましんさんは、ぷろねたりあーさんである。  つまり、寝る、ぷろなのだ。  それも、なみの、ねたりあーさんではない。  凄まじい夢を見るのである。  さらに、彼が見る夢は、多くの部分が、現実化される。  飛行機事故の夢をみれば、どこかで、飛行機が事故を起こす。(墜落とは限らない。)  地震の夢をみれば、どこかで、地震が起こる。(地震はしょっちゅう起こっている。)  火山の大噴火の夢をみれば、どこかの火山が噴火する。  しかし、予知夢というのとは、違うらしく、その見た夢が、大方、具現化されてしまう、ということらしい。  やましんさんは、べつに、マスコミに訴えたりはしない。  ネットに、書いたりもしない。  お医者様に、話すだけであり、お医者様から、外に出ることもない。  彼は、孤独なのである。  では、なぜ、わかったかというと、さらに、そういう夢をみる人の夢を捜索している《夢監察官》が存在しているからなのだ。  実は、地球政府の情報機関である、内務省情報課は、そうしたタイプの、危険なネタリアートが、かなり地球上には存在していると睨んでいた。  彼らが見る悪夢が、さまざまなタイプの災害や事故を引き起こしているというのである。  その実像を解明するべく、極秘に配属されているのが、《夢監察官》、略称(ユメカン)である。  各管轄地域に、一人づつ配属されているが、その存在が明らかにならないように、普段は別官庁のうだつの上がらない職員として勤務している。  そういう、いささか、気分の悪い職務にあっても、本来の職務を粛々と遂行できるような、クールな人物である必要がある。  おまけに、彼らの任務は過酷である。  つまり、《ほし》は、何時、夢を見るかわからない。  夜中であることが多いが、そうとも限らないのである。  人口が多い地域だと、複数の夢が乱舞して来ることがある。  やましんの存在をかぎつけ、そのそばに接近したのは、《気疲れパンダさん》こと、浜松宇名貴であった。  普段は、地域の気象観測装置の保守点検を主な任務として、地方気象事務所に勤務していた。  地球気象省の、この下は、もう、地獄しかないという、最末端である。  外回りが主な仕事で、動きやすい利点がある。  彼女が、やましんを見つけたのは、転勤してきた最初のある晩にキャッチした、凄まじい夢だった。  超大量のネズミさんが発生し、地域を恐怖と混乱に陥れる夢である。  今の時代に、そんなこと、ないだろと、思っていたら、実際に、とある商店街を中心にして、大事件に、なりかけたのである。  なぜ、そういうことになったのかは、未だに解明されていない。  つじつまが合わないことこそ、やましんの夢の恐ろしい点なのだ。  交通事故や、飛行機の墜落など、次から次へと悪夢にさいなまれるやましんは、気の毒でもないわけでもないが、そんなこと気にしていては、この仕事は勤まらない。  彼女は、各方面に具体的な情報を出し、事故の発生を未然に防いできたのである。  この度も、大事にならないうちに、ネズミさん退治は行われた。  「まったく、なにやってんだか。」  宇名貴自身は、気にしないことにしてはいたが、最近、いささか、いやになりつつもあった。  その直後、やましんは、またまた、恐ろしい夢を見た。  小惑星が、太陽の影から現れて、地球を襲うと言う夢だ。  しかも、やましんだけが生き残り、あとは、みな絶滅という、自分勝手な夢である。  さらに、この小惑星には、宇宙人が隠れているという寸法なのである。  もっとも、夢のすべてが、実現する訳ではない。  宇名貴自身は、宇宙人の部分は、あり得ないところだと判断したが、小惑星については、実際に起こり得るとされてきたところであり、ただちに政府に対して報告をした。  そうして、地球政府の《地球防衛衛星》が、その小惑星を、ついに見つけたのである。  まさに、死角であった。  かなり、大きい。  直径が3キロほどある。  このくらい大きいと、都市一つとかではなく、もっと広い範囲が消滅し、舞い上がったちりなどで、地球は夜のような毎日になるだろう。  かつて、恐竜を絶滅に追いやった物体は、直径が10~15キロはあったと見られているから、それよりは小さいが、かすめて通るのではなく、まともにぶつかったら、その被害は恐ろしいものに、なるだろう。  地球政府は、極秘裏のうちに、『対小惑星起動修正衛星 竜星Ⅱ』を飛ばし、体当たりさせたのである。  間一髪というところになった。  国民に知らせたのは、軌道が変化してからである。 『ああ、うなちゃん、やましんさんの恐ろしさは、実証されたなあもし、接触して、拉致してくれまいかぞな。』  上司から、指示が来た。  『はいな。了解。ただ、相当な堅物で、変人らしいですよ。閉じこもり度、70%です。並の手段では、警戒して難しそうです。まっとうに、警察署あたりに呼んだ方がよろしいかも。』  『そりゃあ、うなちゃんに、任せるぞな。』  『了解。ときに、小惑星に、宇宙人はいたんですか?』  『そおおれが、そういうことはないということらしい、と、隊長からは言われたがぞな、どうも、逆の情報も来てるぞな。調査隊員が行方不明になってるらしいともぞな。まあ、うなちゃん、我々には、関係ないぞな。』  『はあ・・・・・まあね。』  宇名貴は、優秀な職員ではあるが、意外と我が道を行くタイプでもあるのだ。      ************   ************        
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