アトム・タイム

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アトム・タイム

 彼と話すようになったきっかけは、ごく最近のこと。 「佐藤さんって、美大出身?」  一ヶ月ほど前のある日。終業時間を過ぎたわたしは帰り支度を済ませフロアのドアを開けた。その時、偶々営業先から帰ってきた彼がそう話しかけてきたことがきっかけ。  彼の名前は知っていた。志水亜斗夢(しみずあとむ)。我が社ではちょっとした有名人だったから。志水くんは無類のゲーム好き。短い休憩時間でもスマホのゲームに夢中になっているのをよく見かけた。後で彼から教えてもらったことだが、そもそも彼がこの会社に採用された理由に、そのゲームがかなり関係していた。 「もしかして、デジタル絵なんかも得意?」 「はい、一応できますけど」  美大で培った絵画の基礎デッサンと今のウェブデザインに関わる仕事。そのため、タブレットでデジタル絵を描くことも多くなった。それでも無性に白いキャンバスに風景画や静物画を描きたくなる時はあるけれど。  どうしてそんなことを聞いてくるのだろうと思い、わたしは志水くんを見上げた。外回りから帰ってきた冬の冷たい外気のせいか、上気したせいか頬を赤く染めた彼から、嬉しそうに懇願された。 「じゃあ、ゲームアプリの背景画を描いてくれない?」
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