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ココア・タイム
「佐藤さん。背景画さ、変更したいんだけどまだ間に合う?」
「しーーっ!」
暖房が効いたオフィス内。一フロアに五列。等間隔に並べられた5つの各席に、一台ずつパソコンが配置されている。わたしはパソコンを打つ手を止めて、慌てて口元に人差し指を立てた。そして、キョロキョロと前後左右を確認する。背が高い彼の腕を引っ張って中腰にさせると、声を抑えて注意した。
「今、仕事中だから! その話は後で!」
「後でとか言いながら、佐藤さん、仕事が終わったらすぐ帰っちゃうじゃん」
体勢を変えてしゃがみ込んだ彼は、交差した足の上に肘を置きながら文句を言う。
「俺、話したいこといっぱいあるのにさ」
「わかった。わかったから、その話したいことは仕事が終わってからにして」
わたしに恨めしそうな目を向けて、彼はスッと立ち上がると強気な捨て台詞を吐いた。
「今日こそは絶対だからな! 帰り待っててくれないと許さないから」
「亜斗夢」
「はーい、課長。今、行きます」
上司から呼ばれた彼は軽く返事をしながら、チラリとわたしにまだ何か言いたげな視線を送ると足早に立ち去った。
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