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……
「あの、その、何でこのノートの存在を……」
食い入るようにノートを読んでいる桃子達のうしろを松木さんはウロウロするばかり。
「……いや、すばらしいですよ。ここまでの記録ノートを作るとは、一流の桜木ファンですね。尊敬しますよ先輩」
庄田が目を輝かせて言う。
「人として最低じゃん? ストーカーよ。通報する? 桃子ちゃん」
真理子さんはじっくり読んで白い目を松木さんに向ける。
「そ、そんな悪いことまでしてないじゃないですか~。他の人が見ちゃいけないところは絶対覗いてないし。家までつけたりなんて絶対ないですから! ノートを人に見せるつもりも無かったし。ファンは僕の他にもいっぱいいるんですよ。わかってない図々しい奴は声掛けたりするけど、即きっつい怒りの微笑で撃退されるんです。僕なんか大勢の追っかけの一部、認識もしてくれてないですよ。あっ、髪の毛はたまたま! 桜木さんが掲示板に掲示物を貼り付けているとき画鋲に一本引っかかったのを見かけて、持って来ちゃっただけで……」
「うわ……さいあく」
真理子さんがつい本心をもらすと、
「まあまあ。黙っててあげるからさ、ちょっと協力してくださいよ」
恩田が悪そうな笑顔を浮かべて松木さんに迫った。
「協力って?」
「だから、桜木さんの弱点を教えてくれるとか」
「そんな! 彼女は完璧です。弱点なんて無いですよ。それに彼女をどうするつもりなんですか!! 知っててもそんなこと教えませんよ」
松木さんは本気で怒ったような口調になった。
「あ、知ってても、って、ひょっとして有るんだ? 弱点」
「ななな無いですって!」
「桜木さんがこのノートをご覧になったら、とてもショックをお受けになるだろうなあ」
「ひ、ひどい! 返してくれ。あー。誰か何とかしてくれよー」
松木さんは頭を抱える。
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