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「聞いたよ。今大変なんだって?」
手を取り合い、踊りながら二人は異郷でやっと巡り会った同胞のようにたくさんしゃべった。同期の女の子同士の仲は特別なのだ。四宮えりこは遠慮しつつチェーンの一番後ろにくっついていた。
「うん。存続の危機って感じ」
「でも頑張ってるねえ。体育館に行ったら別の団体が使ってたから、あれっと思って部室に行ってみたの。そしたらこの場所のメモ書きがあって。わっ、わっ、間違えた」
しゃべりながら踊っているとこういうことになる。
四宮えりこは桃子と特に仲の良い他大学の同期で、あちこちの大学で催されるダンスパーティでもよく一緒に踊っていた。彼女は「ラウンド系」とみんぶ界で言いならわされる、アメリカのポップミュージックに振り付けした二人で組んで踊るカップルダンスが得意な子で、その無駄のない美しい動きはちょっと人目を引く。東条部長と四宮でロシアのカップルダンスで女の子がチーフを振り回す「カマリンスカヤ(Kamarinskaya)」を踊り、主に依田さんの為の基礎ステップ練にも熱心に参加した。彼女はちょっときれいな細い子で、背丈は桃子と同じくらいだが指が細長くてきれいだ。連取しているとどきどきしてちょっと掌が汗ばんでしまうくらい。今日はピンクのTシャツを着て、薄緑と紫の花柄のスカートを履いていた。
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