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大分日が長くなっていたので、五時を過ぎてもまだまだ明るい。手を取り合って列をなし、音楽に合わせ、同じ動きで延々と進んでは戻る民族舞踊を踊る集団。その伸ばした腕の上に日差しが窓から降ってきて、この狭い部屋に和やかな空気が積もっていくのだった。部長は桃子とえりこの為にアルメニアの女性舞踊「アクチークネルー・パー(Aghcheekneroo Par)」をかけて、二人の糸を紡ぐような美しい手の動きを見ていた。女の子達は好きな曲を踊り終わった興奮のまま壁に寄っていって仲良さそうに話している。
「今度うちの三年の指導部長達も連れてくるね。知ってるでしょ?」
「えー噂のあの先輩じゃなくて?」
「あれは違うって。自分の方こそあの東条さんって」
ギャーまさかーやめて、とひそひそ、どうやら恋話で盛り上がっている様子だったが、ほらほら、とまったく空気の読めていない部長が遮った。
「時間だからコール始めるよ」
例会が終わって、皆でご飯を食べに行こうと四宮えりこを誘ったが、彼女は今日はもう帰らなくちゃと、先に一人帰ることになった。
「本当、ありがとうね! 今度そっちの例会にもお邪魔するね」
「こちらこそありがとう。お疲れ様」
時間はまだ七時で、夏至の頃だったから空はまだうす明るい。えりこはにこにこと部長や依田さんに礼儀正しく挨拶して帰っていった。良い子だねえと依田さんも笑っている。
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