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女性の悲鳴が夕暮れのキャンパスに響いた。
初めにそれを聞きつけたのは、なんと道場から引き上げてきたばかりの合気道同好会の面々。
「何だー!」
恩田、本田、庄田は声のした方に向かって突進していった。
「おーい! どうした!」
夏で、空はまだ明るくとも、この木立の中に入ると濃い影に覆われた空間はかなり薄暗くなっていた。
彼らがたどり着くと、わっと蜘蛛の子を散らしたように、闇に紛れて見えなかった黒装束の人々が四散した。
「ま、待て!」
庄田は勇ましく挑んでいくふりをしたが、そもそも大勢のうち誰を捕まえて良いのかわからなかったし、彼らには合気道同好会の面々を相手にする意志など無かったようだ。あっという間に人の気配は消え去ってしまった。
「勇ちゃん、圭ちゃん、よっちゃん、あそこ、あっちよ!」
鳥越真理子は石段のところに座り込んでいる女の子を見つけ、駆け寄っていった。
「ねえ、大丈夫?!」
「は、はい……」
座り込んでいた女の子は意外に落ち着いた声で返事をしたので、真理子もほっとして、肩に手をかけた。
「どうしたの? 何かされた?」
「い、いいえ、ありがとうございました」
女の子は立ち上がって真理子を見た。
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