7.他大の同期

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「とにかくいらっしゃい……どうしよう。私たち部室が無いから……」 「こういう時に部室があればなあ」  恩田が言う。 「こういう時ってどんな時よ。こんな非常事態そんなに無いわよ。守衛さんのところへ行こう」 「だ、大丈夫です。ちょっとびっくりして。変な人達に取り囲まれて、変なこと言われたんです。それだけです」 「変なこと?!」 「フォークダンス部を解散しろ。さもないと恐ろしいことが起きるぞ、って」  さすがに元部員たちも動揺した。女の子は学生のようだが、既に落ち着いて、しっかりした口調で話していた。 「とりあえず、明るい所へ行きましょ」  真理子は考えあぐねて、かつての部室のことを思い出す。そしてフォークダンス部の部室へと女の子を連れて行ったのであった。 「で、怪我はしませんでしたか?他に何かされましたか?」  落ち着いた声で言う東条部長はこういう時非常に頼もしく見えた。例会後コール練習と打ち合わせを終えた東条と桃子が部室に戻ると、さっき別れた四宮えりこが、鳥越真理子らに連れられて部室に座っていたのであった。  話を聞いて、桃子の方が泣きそうになりながらえりこにぴったりくっついている。 「大丈夫です。ご迷惑おかけしてすみません」 「いや、それはこっちです。申し訳ない。多分我々の為にこんなことに」  部長は非常に真面目な顔で頭を下げた。誠実そうな部長に好感を持ったか、えりこは少し笑って見せた。
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