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「私も入学を辞退するべきでした」
桜木さんが言う。
「それは、行方不明になった彼がどこにいるか調査するということで思いとどまってもらったはずだね」
「……ご丁寧に、福徳大フォークダンス部に入って、そこで出会った恋人がいることまで調べてくださって」
「はは、ま、楽しくいこうよ。人生長いんだし」
祐天寺は立ち上がり、空々しく笑った。
「君は優秀だから大学院まで行きなよ。お嬢様学校じゃそういう道にも進めなかっただろう? そして学校を出たら、うちの会社に来ないか。いや是非来て欲しいよ」
何から何まで祐天寺の思いのまま。世の中恐いことなど何もない。叶わないことなど何もない。厚顔無恥で楽天頭のこの男のようなのが、やっぱり人生の勝者なのだわと思って、彼に負け続けた桜木さんはため息をついた。
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