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だがスピーディがモットー(あるいは変わり身の早いのがモットー)という恩田本田正田が、「僕が教えたと知られたら怒られるから、僕の名前は出さないでくれよ?」と言う依田さんの友人、松木さんという人を見つけ出してきた。松木さんは細身の大人しそうな男子学生だった。
「その懐の物を見せてくれませんかね」
「それを賭けて勝負しますか! 遠慮はいりません、ちなみにこちらは合気道を少々、あ、一人は空手もやってましてね! どうですか!」
「ははは、いいじゃないですか、困った時はお互い様、さあさあ、是非是非、是が非でも貸してください」
突然あやしい下級生達にわらわら取り囲まれて、気の弱そうな松木さんはひえーとすくんでいる。だがなにしろ好奇心の鬼と化した学生を止めることのできるものは無い。
早速、彼が慌てて死守しようとしていた「Yuko ★ Sakuragiノート」を「お願いして」見せて「もらった」。わくわくして皆で覗くと……。
「げっ! このべたべた貼ってる写真は一体」
「うわ、盗撮。犯罪~」
「べ、べつに盗撮とかじゃ」
「ちょっとちょっと、なによこれ?! 桃子ちゃん見て、この髪の毛って……やば」
「うるさいな。帰るよ?」
「わわ、ごめんなさい! 黙ってます!」
桃子も真理子も恩田らも興味津々で、生唾を飲みながらそのたくさん書き込みのあるノートを覗き込んだ。
「○月×日晴れ。桜木chanは水色のスカート。(○月△日に駅ビルで買っていたものか?)今日も清楚でさわやか。髪は巻いてない(三日連続)。サンローランのハンカチを持っていた。夕方からバイトらしい。(荻窪・家庭教師)」
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