フォークダンスの神が降臨する

10.防衛戦

もちろん、世間でこの種のもめごとは実際はよく有って、今時学生にあるまじきなどと驚くことではないが、なにしろ元華族という名誉会長の身辺や、ちょっと古い世代の大学同窓会の皆様にとっては、依然としてあるまじきことなのだ。 男女仲良く手を繋ぐことが目的の軟弱な若者達……とまでは言わないが、同窓会の一部でも実はフォークダンスに対する偏見は有った。そこにこの匿名投書だ。普段若者のやんちゃや軽い騒動を暗黙のうちに見逃してやることはあるにしろ、こうまではっきり直訴されては、名誉会長も無視するわけにいかなかったのだろう。
「ご心配をおかけして誠に申し訳ありません。今調査中ですので、できるだけ平穏に解決するよう努力します」
「頼みます。犯罪行為ではないし、ことを荒立てる必要もありません。学生さん個人の名誉を傷つけることがあってはいけません。事実関係の解明や、今後サークルをどうするかに関しては、学生連合の方で適切で寛大な対処をしてくださることでしょう」
　御意に、と祐天寺は深々頭を下げる。親切な名誉会長は苦言を呈するわけでもなく、フォークダンス部のことまで心配してくださっているご様子だ。それが救いではあるが……しかしここまでくると……。