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 木田マモルとの会話で導き出された「無意識の解放」とも言うべき手法を実行するべく、東条アキラはさっそく考えを巡らせてみた──のだがしかし。意識的に無意識になることなどできるはずもなく、彼は早々に行き詰まってしまった。  ふんわりと精神論的納得をしたところで、事態はまったく前進していなかったのだ。そんなことにも気付かなかった己の浅はかさに辟易し、東条アキラはひとり溜め息をついた。生ぬるい息を浴びせかけられたノートパソコンの画面上では、カーソル位置を示す縦線が明滅を繰り返している。  ──だいたい、音楽と小説を同列視したことに無理があったのだ。  そんな風にして、東条アキラは苦し紛れのそもそも論にたどり着く。やはり餅は餅屋だろう。そう考え至った彼は文章エディターを閉じてウェブブラウザからTwitterを開き、「小説」「キャラが勝手に」というキーワードで検索をかけた。  もちろん、彼はこれまでにも似たような検索を何度も試みており、検索結果に表示されるツイートはどれも見覚えのあるものか、見覚えのあるものと同じようなことを言っているツイートばかりだった。    堂々巡りで時間を無駄にするばかり。  虚無感に襲われた東条アキラはうんざりした気持ちでブラウザを閉じようとした。だがしかし、ウインドウ右上の「×」をクリックしようというまさにその時、彼の視界が何かを捉えた。  検索結果のひとつ。  見知らぬ誰かのツイート。  その文面に彼の注意を引く何かがあったのだ。 東雲モメ@ShinonomeMome・2時間前  小説書いてるとキャラが勝手に喋ったりするんだけど、こないだ悪役キャラが私も知らない偉人の名言みたいの引用しだしてビビった。あとで調べたら実在する十八世紀の哲学者っぽくてさらにドン引き(>_<)
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