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東条アキラは驚愕し、恐怖と言ってもいい感情に襲われた。彼はすぐさまアカウントのページに飛び、プロフィールや他のツイートや彼女(性別は諸々の内容からそう推察できた)が投稿しているウェブ小説のリンクなどを確認した。
そこから分かったのは次のことだ:
①東雲モメは三十前後の独身女性である。
②小説投稿サイトに作品を投稿しているものの、あくまで趣味といったスタンスでプロ志向は薄い。
③近頃ゾンビ映画にはまっている。
④静岡のどこかの飲食店で厨房に立っている。
⑤テネシーというあだ名の友人と頻繁に出かけている。
⑥特別な日には、わざと左右別の靴下を履くというゲン担ぎを行っている。
⑦酒好き。
⑧特に好きなわけでもない俳優がよく夢に出てくる。
どちらかと言えば変わった人間に思えるものの、それは決して超常的な何かを感じさせる特殊さではない。だがあのツイートは「読んだこともない哲学書の引用はできない」という東条アキラの発言と明らかに呼応していた。しかもツイートが投稿された二時間前というのは、木田マモルとその会話を行っていた時間帯と一致する。
いや、冷静になれ。
東条アキラは自分に言い聞かせた。そもそもツイートの内容が嘘だという可能性もある。というより、そう受け取るのが自然だろう。実際そこに寄せられた返信は、どれも彼女の発言をネタと受け取っている。
超常的な何かなど起きていない。
これはただの偶然だ。
だが──と、彼は考える。
静岡のどこかの飲食店なら、彼が住む東京からそう遠くない。もっと情報を探れば、場所を絞り込むことも可能ではないだろうか。
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