1/1
前へ
/13ページ
次へ

 東条アキラが目星を付けていたのは、静岡駅から二駅のところにある草薙駅周辺であった。過去のツイートで、この辺りにある静岡県立美術館に触れたものがあったのだが、言葉遣いの端々に漂っていたある種の無関心さが地元民のそれを思わせたのだ。  もちろんこれはただの直感に過ぎない。  だが周辺を探ってみれば画像付きツイートの風景と一致する何かが見つかるなどして、芋づる式にゴールまでたどり着ける可能性もある。スタート地点としてそう的外れではないはずだ、と東条アキラは考えていた。  そして実際、彼の読みは的を射抜いていた。  美術館を起点に周囲を徘徊していると何やら見覚えのある石段が現れ、その石段が過去のツイート画像と一致していたのだ。画像では分からなかったが、それは神社の石段であり、その入口には色褪せた鳥居が建っていた。  少なくともこの辺りが東雲(しののめ)モメの活動圏内であることは間違いなさそうだ。  確信を得た東条アキラは周辺の飲食店を片っ端から当たろうと思った。手掛かりとなるのは「店の前で猫が寝てた」という画像付きツイートで、わずかに写っている背景のレンガ壁が特定の鍵となる。  ──というか。  そこで東条アキラはハタと気付く。わざわざ足で探し回らなくとも、地図アプリのビューモードを使えばいいではないか。初めからそうするべきだったと後悔し、自分の愚かさに嫌気がさしてくる。であればコンセントを使えるカフェ等に立ち寄り、充電しつつ地図アプリ探索を行うのが賢明だろう。そう考えた東条アキラは駅方面へと引き返し始めた。  ──のだがしかし。  漠然と駅の方向に歩き出すと、目の前に例のレンガ壁が現れていた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加