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しばらくは何やらぶつぶつ言いながら、箒で剛の部屋の中を掃除していた大家さんだったが、部屋の中も綺麗になったのだろうか、ふっと僕の隠れているクローゼットに手をかけた。
(まずい、クローゼットが開けられる)
僕は危機感を感じ、クローゼットの中で小さい体を更に小さくさせた。
そんかことをして必死に見つからない様に工夫はしたのだが、それも束の間、次の瞬間、ついに大家さんにクローゼットを開けられてしまった。
「あれっ、こんなところに猫なんか」
ついに僕は大家さんに見つかってしまったみたいだ。
「山田さん、隠れて猫なんて飼ってたのね」
大家さんがそう独り言を言ってるのが僕の頭の上ではっきり聞こえたが、何せ僕は気まずく顔を上げることも出来なかった。
小さくうずくまりながら、心の中でずっと
(ごめんなさい、ごめんなさい)
と繰り返していた。
その後のことははっきり覚えていない。
ずっと下を向いてうずくまってたからか、緊張で疲れたからか、僕はそのままクローゼットの中でいつの間にか寝てしまったみたいだ。
目が覚めると開けられたはずのクローゼットは閉められていて、部屋には大家さんは既にいなかった。
(夢だったのか?
いや、まさか。部屋の中がだいぶ綺麗になっている。
やっぱり大家さんは部屋に入って来たんだ。
僕は大家さんに見つかってしまったんだ。
もうダメだ。きっと僕は追い出されるだろう)
そんなことを考えながら、憂鬱な気持ちのまま剛の帰りを待った。
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