やっぱり、こんなところじゃ暮らせないよ

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 【なんなんだこの部屋。とにかくすげー汚ねー。汚ねーし、なにより狭い、狭すぎる。風呂も無いし、よく見たらエアコンすらついて無いじゃん。僕こんなところでこいつと一緒に暮らして行くの。お母さんに言われ青年に飼われる覚悟で来たけど無理だよ】  僕は青年の部屋の汚さと狭さに、また嗚咽が込み上げてきた。  タクシーの車中の中  【お母さんに説得され人に飼われることの覚悟はある程度できていたし、車中では僕のことで話は盛り上がってたし不安は感じながらも可愛いがってくれるんだろう、なんて期待しつつ青年のところまで来たけど、なんだよこの部屋、さすがにこんなところでは暮らしていけない。どうにもこうにもさっきから嗚咽が止まらない。いやだ。やっぱりお母さんのところに戻りたい】  そう思いながら、僕は抱え上げられた青年の手を力いっぱい振り払った。  僕も、一時はお母さんに言われ青年に飼われることを覚悟したとは言え、さすがにそこはやっぱりまだ生後一ヶ月の産まれたての赤ちゃん猫だ。気持ちはグラグラと二転三転し、またお母さんのところへ戻りたいと泣きが入り、一瞬にしてホームシックになってしまった。    僕は青年の手を振り払うと、すぐに隠れられそうなクローゼットの中に逃げ込んだ。  「チビ、どうしたんだよ。なんで逃げるんだよ。チビ早く出て来なさい」  青年は僕が逃げ込んだクローゼットに手を伸ばして僕を捕まえようとしたが、僕が逃げ込んだクローゼットの入り口はすごく狭い。青年の手なんか届きやしない。  【いやだよ、絶対出ないぞ。やっぱりこんな部屋でこ暮らすのは嫌だ】  早速狭いクローゼットに逃げ込んだのは僕が考えた作戦だ。僕は青年を困らせ、僕を飼えないとわからせた上でオヤジのところに返品いや返猫し、お母さんのところに戻してもらえるんじゃないかと思ったから。  「参ったな。一向にクローゼットから出て来やしないや。いきなり嫌われちゃったのかな。やっぱり俺には猫なんて飼えないのかな」    青年は独り言のようにそう呟いていた。  【そうそうその調子。あなたに僕は飼えませんから。僕は絶対ここから出ないよ。諦めてオヤジに言いなさい。やっぱり猫飼えません、オヤジに返しますって】  僕は意地を張り、青年が僕を飼うのを諦めまたCATに返してくれることを期待しながらクローゼットの中で意地を張った。    そうこうしていると日が明けた。  「チビ、いつまでそうやってんの。いい加減出て来なさい」  青年はクローゼットの中の僕に呼びかけたが、僕は一切それに応じなかった。  「そうか、そうか、わかったよチビ、もう仕事行って来るからね。気が向いたら出てきなよ」  青年はそう言って郵便配達の仕事へと出かけて行った。  部屋のど真ん中には青年が用意してくれた猫用の缶詰のと水が置かれていた。 a8ac9fe9-595b-41c1-b070-9944e97bf02f
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