テストですと…!?

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 この学園において、自販機があるのは、高校の校舎の中庭のみである。  金持ちなんだから寮にも自販機置け!と思わなくもないが……なんで中庭にしかないんだろう?  少し不満に思いながら、校内に入り上靴に履き替えていると、背後から誰かに呼び止められた。 「あー、カゲくんー!やっほー!」  "誰か"と言っても、俺を「カゲくん」だなんて呼ぶ奴は、1人しか居ない。 「よう、陸!」  そう言って振り向けば、彼はニカッと笑った。  ……でも、何だろう、この違和感。どこかが、いつもと少し違う気がする。…表情か? 「カゲくんはー…ええと、部活じゃないよねー?テスト期間だしー。」 「ああ。爽達と勉強してたんだ。」 「そうなんだー、えらいねー!」 「そういうお前は?」 「僕は今帰りー。これから寮で、空と勉強するんだー。」 「えっ、双子BL展開キタコレ!?wwwww」 「違うけどー、空とはいつも一緒に勉強してるんだー。放っておくと、空、課題しないからー。」 「へー。…ん?」  ………なんか、気のせいかもしれないけど、今日の陸… 「…まあでも、課題そんな感じなのに、赤点ラインは超えてんだろ?すごいんだな、双子弟。」 「うんー、そうだよねー。」  …いや、やっぱ気のせいじゃない。なんかこいつ、様子がおかしいぞ?  そう思って観察してみると、一点明らかに違和感を感じた。  それは、前髪のあたり。陸は、遊園地に行って以来、そこで買ったピン(夕暮れ時の空の色!)が気に入っているのか、毎日付けていた。しかし、今日はそれを身につけていない。  これはつまり…… 「なあ陸、空とケンカでもした?」 「はあ!?そんな訳ないじゃん!僕達はいつでも仲良しだよ!」  ぷくーっと頬を膨らませる姿に、違和感は増幅する。  なんだか、陸が陸でないような。陸はこんな怒り方しないような………いや、待てよ?この雰囲気はむしろ… 「あのさ、間違ってたらごめんだけど……お前、陸じゃなくて双子弟だったりする?」  俺が聞くと、目の前の彼は目を見開いた。 「…………分かるんだ。」  一瞬、表情が抜け落ちたような気がした。  けど、それは本当に一瞬。俺の見間違いだろうか? 「陸の真似、見破られたの初めて!…ねえ、僕、何か変なこと言った?」  双子弟はいつも通り、エクボを浮かべてそう言った。 「変なことっていうか……なんとなく、いつもと表情の作り方が違うなっていうのと、いつもより双子弟大好き度が足りない気がしたっていうか…w」 「え?」  双子弟はこてんと首を傾げた。  と、その時だった。 「あー、カゲくんー!空ー!」  教室側の廊下から、陸が手を振ってやってきた。前髪にはヘアピン。今度こそ、間違いなく陸だ。 「よう、陸!」 「陸…」 「2人とも、どうしたのー?こんなところでー。お話ー?」 「そうそうwww双子弟が、…」  陸の真似をしていて…と言おうとしてやめた。  視界の隅に、双子弟が見えたから。その目には、なぜか元気がなかったから。  もしかしてこいつ、陸の真似をしていたこと、陸に知られたくないんじゃね?  なんとなく、そんな気がした。 「双子弟が…陸と勉強するって言うから、双子BLキタコレだなって話してたwww」 「えー?そんな話してたのー?」  陸は目をパチクリとさせた。双子弟は、心なしか、ホッとしたように表情を緩めた。この様子を見るに、陸の真似のこと、言わなくて正解だったっぽい。  けど、何でこいつ、陸の真似のこと知られたくなかったんだろうか。見破れてはしまったけど、最初は完全に陸だと思ったし、完成度はかなり高かったと思うんだが……  陸はというと、笑って言う。 「双子BLはキタコレじゃないけどー、僕ー、空と勉強するの好きなんだー。空は色んな問題サクサク解いててーすごいしー。僕が問題分からなくて困ってたら、教えて助けてくれるしー。空と一緒だと、僕も頑張ろうって思えるんだー。」  エクボを浮かべる陸。紫の瞳が、優しい光に満ちている。  それを見て、実家のような安心感を感じた。  これこれ!やっぱ、陸はこうだよな…!wwww  双子弟のことを誰よりもすごいと思ってるのが伝わってくるというか、全肯定というか!双子弟のことが大好きなのがダダ漏れてるっていうか!!wwww  自分のこと以上に双子弟のことを自慢に思っている。それが陸らしさのひとつなんだよなwww
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