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俺と彗誠の部屋に戻ると、彗誠は勉強道具を置いた後食堂に行き、夕食をもらって帰ってきた。
「いただきます。」
「いただきマッスル!」
2人して合掌し、ご飯を食べる。…つっても、俺はカップ麺だけど……。
「ひっさびさに勉強したわww知恵熱出そう…www」
「……」
世間話程度にそう言うと、彗誠は箸を止め、じっと俺を見た。
「え?どした?…あ、もしや歯に青ネギついてる!?www」
「いや。」
そう言って、視線は逸らされた。黙々と食べるその様子に、少し、不機嫌の気配を感じる。
「…なあ彗誠サン、なんか怒ってる?」
「別に。……ただ、随分楽しそうだったなと。」
楽しそう…?
…話の流れ的に、みんなで勉強してた時のことだよな?
俺は爽と勉強をしていた訳だが、それを見て「楽しそう」だと不機嫌になっているのか?
ハッ!これはもしやもしや!
「彗誠サン、拗ねてる?!嫉妬してんの!?」
「うるさい」
…違うって、言わなかったぞ!?wwww
つまるところ、拗ねてんのも嫉妬してんのも本当のこと!
そして、爽が俺と楽しく勉強するのが嫌=爽が好きっていうコト!?!?!wwww
【大朗報】彗誠に 恋愛腐ラグ 立ちにけり!!!
「爽のことが好きなら、応援するぞ!!www」
「違う」
俺の言葉を、彗誠はピシャリと跳ね除けた。
全くもう、素直じゃないなwww
ツンデレオカンで困っちゃうwww
「そんな照れんなってwwwwこの親友兼腐男子の影山に任セロリ!!」
俺がそう言うと、彗誠は静かに箸を置き、何かを訴えるように強い目で、俺を見た。
「お前にそう言われるのは、我慢ならん。」
「え、……?」
その声が、あまりにも拒否感に満ちていたから、驚いてしまった。
何で彗誠、こんなに怒ってんの?……まさか、考えたくはないけど、俺なんかに応援されるのは癪に触るとか……?
親友って言葉、彗誠はよく否定してくるけど、内心はそこそこ俺のこと認めてくれてるのかなって思っていた。…けど、それは俺の勘違いだったのだろうか?
ツキンと胸が痛み、少し息が苦しくなった。まさか、そこまで彗誠に嫌われてるなんて……
「…はぁ。…本当に、勘違いしかしないな、お前は。」
「ごめん…」
「俺が不快なのは、水川が好きだからでも、お前が嫌いだからでもない。」
「え?」
嫌いだからじゃない…。じゃあ、なんで?
頭の中はハテナだらけ。でも、その言葉に、じんわりと嬉しみが広がった。
と、その時だった。
彗誠の右手が、俺の顎に触れたのだ。
何事?と思う間も無く、彗誠の顔が近づいて来る。そして、唇に温もり。
あ、アジフライのタルタルソースの風味。
そんなことを考えてしまった。………って、え?は!?ちょ、ちょっと待って!?!?
ここ、これって、よく考えなくても、キキキ、キ……
というやり取りが、今頃、景明達の部屋で行われていると良いなぁ…。
「は?」
ソファに寝転がりながら、今の景明達の様子を想像していると、そんな声が耳に飛び込んできて、現実に引き戻された。
上体を起こして声のした方を見ると、熱田君。僕を見てポカンとしている。
お風呂から上がったらしい。
部屋着姿で、髪の毛が少し湿っている。ドライヤー使わないで、湯冷めしないんだろうか。風邪を引かなければ良いけど。
それにしても、僕を見てそんな顔をするなんて。一体どうしたというのだろう?
「どうしたのさ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。今日一日、頭をフル稼働させて疲れが出たのかい?」
「いや、それはこっちの台詞だ。影山みたいなことを言って…」
「え?」
ちょっと熱田君が何を言っているのか分からず、少し考えてしまった。そして、一つの結論に至る。
「あれ?もしかして、想像が口に出ちゃっていたかな?」
「自覚なしかよ!?…しかもそれ、実際あったことじゃなくて、全部お前の頭の中で考えたことだったんだろ?影山以上の変態じゃねえか!もはや怖えわ!」
心外だなあ、変態だなんて。ちょっと想像力が豊かなだけじゃないか。
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