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それからあたしたちは、ひとくさり恋多き女である結衣のことをうらやんだり、やっかんだり、悪口などもちょろちょろ口にした。腹の黒さも女ともだちならではである。
そのうち、矛先があたしに向いた。
「その点、ほのかは立派よねえ。初恋の人と駆け落ちまでして、その後も一途でしょ? 幸せよねえ」
「なーにバカ言ってんの。そんなの、昔の話だって。いまじゃ、粗大ゴミあつかいよぉ」
「まーたまた」
「ほんとだってば」
などと照れながら不幸せ自慢が始まる。女のおしゃべりとは恐ろしいもので、そこからなぜかテレビで見るアイドル男性歌手の話や、スーパーの特売や、ブランド物のハンドバッグや、あれやこれやと話が飛んだ。
そうやっておしゃべりに夢中になっていると――。
ふと、首筋に殺気を感じた。
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