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見ると、そばに立ってじっとあたしを見つめている女の子がいた。地味なグレーのトレーナーを着、ボトムスはデニムのスカート。眼鏡をかけ、長い髪をした、きつめの美人顔。歳は十七歳。
「あーら、響子」
あたしはことさらに明るく呼びかける。
「あーら響子、じゃないでしょ?」
とがった声が突き刺さってくる。
「あっ、ごめんごめん」
とりあえず、あやまっておく。
実は、お醤油が切れたので、夕飯の支度の途中で、近くのスーパーまで買いに出たのだった。その帰り道で、真由美と出会って、立ち話に興じてしまったというわけだ。
あたしはあわてて「じゃあまた」と真由美に別れを告げ、響子と歩き出した。
響子は機嫌の悪さをありありと顔に出している。
「そんなにプンプンしないのよ。ちょっと立ち話してただけじゃない」
「だって……スマホを持って出てくれたら、電話するだけですんだのに」
「ほんのちょっとのことだからと思って、手ぶらで出たのよ」
「んもう。なんのためのスマホなんだか」
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