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こちらは、主人公・桜歌(おうか)(非凡)と。
親友の燐音(りんね)(不良)の、ある日のひと時です。
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ある日のひと時
桜歌side
休み時間中、小腹がすいたので何か無いかなーとカバンを漁ると、お菓子がでてきた。
いつ買って入れたんだっけ?
そんな事を思いながらも、ラッキーと封を開けて口にほおりこむ。
と。
「おーかぁ、おはよー」
「むぐむぐ」
おはよう、と言うには遅い時間に(今は三限目の休み時間)現れた燐音は、へらぁっと笑って俺の前の席に座った。
「?、何食べてんの?」
「むぐ、」
燐音は、口をもぐもぐと動かして返事をしない俺に小首を傾げて、じっとこちらの口元を見てきた。
ちょっと待ってな、今飲み込むから。
「コクン、小腹空いたからこれ食べてた」
口の中を空にして、菓子の袋を視線の高さに上げて見せると、燐音の視線もそれを追う。
すると、ぱちくりとした目元が細められて、
「あ~それもしかしてカバンから出てきたァ?」
「ん?」
「一昨日、俺が桜歌のカバンに入れた~」
お前が犯人か~~い
燐音曰く、その日購買で菓子を買ったのは良いものの、手ぶらだった為(カバン持てよ)丁度そこにあった俺のカバンにお菓子を詰めた…と。
人のカバンに詰めるお前もお前だけど、それに今まで気づかなかった俺も俺だよな…!
まぁ、俺としては小腹を満たされてラッキーなんだけどね。
「あ」
「あ?」
すると、燐音がぱかりと口を開けた。
「元は俺の買ったもんだし、食わせて」
と…また、ぱかり。
しょうがないなー、と。
スティック状のお菓子をひとつ。袋からつまみ上げて、形のいい歯並びが見える口に入れる。
ぱくんと閉じられた唇と、燐音のふっと上げられた視線と合わさってー………
にやりと、イタズラ心が湧き上がる。
視線を燐音と合わせたままー…
咥えられていない反対側の菓子に、
「ん」
ぱくりと、俺もそれを口に含んだ。
世に言う「ポッ〇ーゲーム」
俺のこの行動に、目の前の美丈夫が驚きで目をぱちくり。
お互いにお菓子を両端から咥えている滑稽な姿………だけど、俺の戦いはここから始まった。
ポリポリポリ
そりゃ食べるよね~
少しずつ食べ進めて、でも燐音の視線からは目を離さない。
どこまで進める?
どこまで許せる?
どこまで、?
普段ふわふわとしている親友の反応がどう出るか楽しみで、じりじりと食べ進める。
その間も、燐音の口元は動いてなくて……さぁ、どうする?
どこまで、お前は許せる?
鼻先が触れるほどに近づいた。
ポリッ……
お互いの前髪が触れ合う。
ポリッ……
吐息を吐いた訳でもないのに。
お互いに同じお菓子を口に含んでいるだけなのに、そこで混ざり合うような絡まるような感覚。
それが絡み合うようなその時、燐音の目元が弓なりに細められて唇も上がった。
パキッ
あと本当に数センチでお互いの唇が触れそうな所で、俺からそれを折って離れた。
「むぐむぐ…………ゴクン。
つまんねーの」
チッ。
慌てる様子も嫌悪感も出さずにただただ受け身だった燐音に、舌打ちをする。
てか、こんなお遊びにも余裕ぶっこいてますなー。
焦らせる事も出来なかったので、本当にそのままキスしてやりゃよかった。
つまんねーー!と、もう一度口に出して残りのお菓子を貪り食う。
そんな俺のつまらなそうな台詞と舌打ちに、燐音はもぐもぐと口に残った菓子を食べ終えて、一言。
「ざんねーん」
ぺろりと、赤い艶やかな舌で形の良い自身の唇を舐めた。
(飄々としている燐音の表情を崩したかった)
(どこまでしてくれるのかなぁ~?と、内心わくわくしていた(でも、ざんねん))
end
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桜歌は気を許した相手には、パーソナルスペース狭くて懐きます。
平凡な顔して非凡な性格。
燐音はそんな桜歌が気に入ってます。
こちらは突発的に書いた短編ですが、pixivにて本編書いてますので宜しかったら~。
(プロフにURLあります)
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