不良と非凡

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桐生 哀留。 桐生 哀奈。 方や平凡男子。 方や美人女子。 二卵性のこの双子には、実は奈月以外にもう一人の幼馴染みが居た。 とある、工業系の男子高校。 そこは中・高と持ち上がりの全寮制。 感の良い方は気づいただろう。 哀奈に言わせれば、そこは哀留の通う所と同じような王道の高校である。 ただひとつ、哀留の所と違うのは… そこは、不良の集まる学校だった。 言ってしまえば、そこら一体の地域で一番の不良学校だった。 腕っぷしに自信のある者・憧れを持つ者・単純に喧嘩が好きな者などが集まる、危険な所。 今回の話の主人公である、藍原 桜歌(アイハラ オウカ)は、そこの高校2年生になった。 「なった」というのは、今日が新学期・始業式だからである。 式が始まる前に、少しだけ彼の事を話そう。 桜歌は、元々ここの地域の出身ではない。 幼稚園・小学校・中学校と、哀留・哀奈と同じだった。 哀留が哀奈の策略により、中学は別になったが、哀奈とは同じ中学に通っていた。 しかし、中2の頃。 桜歌は、親の仕事の都合により引っ越し・転校せざるおえなくなった。 哀奈は、萌えの対s…幼馴染みとの別れを惜しみ。 桜歌の転校先の情報を知り、「なにその王道不良学校…!!側で見れないのが口惜しい!!」と、涙した。 哀奈とは、今でも連絡をとってます。 そして、突然の転校と。不良中学に通うことになってしまった桜歌は、この先の自分の身に不安を抱(いだ)……… かなかった。 桜歌という子は、哀留と同じくらいの平凡顔だ。 黒髪で背は168㌢位で、筋肉はなくほっそりとしている。襟足は首に少しかかる程度で、前髪が左側だけ鼻下位まで長く片目が隠れる、言わば鬼○郎スタイル。 こんな地味で平凡な子が、不良学校にぽんっと現れれば…パシリ・リンチの餌食である。普通ならば、桜歌自身もプルプル震えるチワワの如く、である。 だがそこは、哀留と違う←強調 桜歌は、基本的に物怖じしない。 腕っぷしも、哀奈の策略により、哀留と同じように格闘技を習わされた。 恐ろしい子、哀奈。 彼女はこの時からすでに、哀留と桜歌という萌えの対象を、着々と作り上げていたのだ。 そして、まぁ他にも色々とあるが。 一番の哀留との相違点。 哀留が「無自覚な非凡」だとすれば。 桜歌は、 「自他共に認める非凡」だった。 さて、もうそろそろ始業式が始まる頃だろう。 桜歌side だるい、だるい。 始業式だからと言って、いつもより早めの登校。 昇降口に貼り出されている、新2学年クラス名簿を見て、自分の名前を探す。 あぁ、あったあった。 そのまま、靴を履き替えて教室へ向かう。 それまでに、誰ともすれ違わない。 登校時間なのに、本当に周りの奴等は時間にルーズだ。 がらっと、目的の教室のトビラを開ければ…… そこには誰も居なかった。 当然。 不良の奴等が、新学期だろうが新しい教室だろうが何だろうが、居るわけがなかった。 それにより、好きな席を一番に選べる俺は、当然窓側の一番後ろに陣取り座る。 え、そこは普通一番の不良とか、強い奴が座る場所だって? あぁ、大丈夫。 その時は、その時だから。 鞄を机横にかけて、ウォークマンを取り出し耳にはイヤフォン。 手元にはスマホを装備して、ゲームやら小説やらを見る。 始業式まで、あと10分程度。 ふむ、と俺は悩む。 (行こうか…それとも、このままゲームを続けるか) 始業式と言っても、所詮は不良高。 ちゃんと行われる訳がない。 しかも、今日から新1年も入ってくる。 始業式は、乱闘式になるだろう。 最初が肝心だと、好戦的な1年。 そんな1年と2年を押さえつけようとする、3年。 その間に挟まれ、1年の相手をしながら3年への下克上を目論む2年。 ここの学校には中2から居るが、毎年最初はそんな感じではじまる。それは、高校に上がっても同じで。 教師も、それはもう毎年の事なので黙殺している。 ただ、警察沙汰と死人がでなければオッケーなのだ。 俺が行っても、ステージの端っこで体育座りしてただ傍観するだけ。 (皆が皆喧嘩好きって訳じゃなく、非参加者はステージ上に避難する) 1年の時は、高校生だとどんなもんかなー?っと、興味本意で行ったけれども(ステージ待機) うん、派手だった。 殴るわ蹴るわ投げ飛ばすわ。 やっぱ、高校生になるとガタイも違うよな。あん時はおもわず、綺麗に空中を舞った奴等に拍手してしまった。 今年も同じようなら、なんのおもしろみもないし……うーん、いっかなぁ。 と、腰を落ち着かせて本格的にゲームにうちこもうかと思った…瞬間。 フッと、黒い影が差した。 ちらりと、右目でその影の元を辿れば… ふんわりと長いピンクがかった髪を垂らしながら、俺を覗き込む美人が居た。 やっべ…イヤフォンしてたから、全然気づかなかった。 ちょっと億劫気に耳からそれを外し、美人と向き合う。 「なぁーにしてんの?」 すると、うっとりとするような笑顔を浮かべ、長身を屈めて俺に顔を寄せる美人。 近い近い。 それに、その笑顔がめちゃ怖い。 俺が答えない事に、一層笑みを浮かべ。 「始業式始まっちゃうよ、行こ」と、有無を言わせず。 俺の両脇にずぼっと腕を突っ込み、ぐいんっと無理矢理立ち上がらせる。 笑顔だが、なんだか不機嫌なその様子に俺は抵抗しない。 所詮、170㌢無い奴が軽く180㌢以上ある奴には敵わないのだ。 ……あぁ、そうだよ。筋肉の付き方も全然違うわ!←やけくそ 美人…こいつは、関 燐音(セキ リンネ)。 俺と同じ2年で、中学からずっと同じクラスの腐れ縁。 あ、今回も同じクラスだったな…ずっと同じとか、なんかそれ怖い←哀奈の萌え呪い的な? ふわっふわなピンクの髪を肩下位まで伸ばして、顔は甘めな美人さん。喋り方も若干緩め。 ふわふわしてそうな外見だが、いかんせん中身が曲者だった。 見るものがうっとりするような笑みを常時浮かべているが、その中はどす黒い。 笑みながら、殴る蹴るは当たり前。 腕っぷしが強いだけではなく、笑みながらの毒舌も朝飯前。 こいつの前で、膝から崩れ落ちていく者を何人も見たことか…… その燐音が、俺を始業式基乱闘式へのお誘いに来た…と。 正直、面倒で行きたくない。 だがしかし。 今現在も、脇の下に腕を突っ込まれプラプラと両足をぶら下げている状態で… あらあら、燐音君の笑みが深まっていくよ? 「………チッ」 「はいはーい、さくさく行くよー」 俺の舌打ちを了承ととり、やっと地面に降ろしてもらった。 そして、仲良しこよし。 お手てつないで行きましょう。 がっつりと手を握られ、俺に逃げ場はない。はぁ、とため息をついて。諦めて燐音の隣に並んで歩く。 あぁ、これから乱闘式か…どうせ燐音も参加するだろうし、またステージの端で宙を舞う人の数でも数えてようかな… 暇だなぁ、とぼんやりと思って、そうだと思い出す。 「燐音」 「…なぁにー?」 さくさくと足を進める燐音が、此方を振り向く。 その綺麗な顔に向けて、 「俺達、また同じクラスだ。よろしくな」 そう、口許を緩めて言えば。 燐音は一瞬キョトン顔をしていだが、次の瞬間には花が咲いたように笑った。 あぁ、この笑顔は好きだな。 ほのぼのと廊下を歩いている俺達。 次の時には、乱闘に突入ー…ってのは、お約束で。 next→pixivにて (お試しで、今連載中の「不良と非凡」1話を掲載しました。 本日、pixivにて6話更新してます。 完結の際には、再びこちらで掲載しますのでその時はまたよろしくお願いします!)
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