ぐっどらっく

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 紗奈と片桐が相思相愛になった所で、俊江がふうっと息をついた。 「これで一件落着だね」 「そうですね」  独り言のつもりが、思わぬ場所から返事が返ってきて俊江は驚いた。 「なんだい、まだいたのかい」 「逝こうと思ったんですけどね」  そういう男の姿は、確かに薄くなっていた。もう妹を守らないで良いと、魂で分かったのだ。 「次のステージが待ってる。もう、安心してお行きよ」 「はい。紗奈は……妹は幸せになるでしょうか」 「なるよ。私の勘は当たるから、大丈夫」  俊江の言葉に、良かった、と鈴が鳴った。魂が昇る時、よく耳にする音だ。ついでに、ありがとう、とも聞こえた。 「さて、馬鹿な部長達の事を社長(息子)に言わなきゃね。紗奈ちゃん、アンタたちももうお帰り」    俊江は一つ伸びをして、タバコを取り出した。会議室を出て行く紗奈と片桐の後ろ姿を眺めると、再来年の春には子供の予感がする。守る側から、今度は守られる側になった、赤子ができる。  薄暗い夜空に一際輝く星を見つけ、俊江はいつか産まれてくる赤子と重ね、優しく囁いた。 「ぐつどらっく、だわよ」 終
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