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初めは見間違いかと思った。急に明るくなったから、兄に少し似てる片桐を見間違えただけだと。
けれど片桐は紗奈を名前で呼ばない。必死で助けようとする姿は、幼い頃、暴走する車から紗奈を助けてくれたあの時の兄そのもの。
昨日も、兄の遺影に片桐を紹介したばかりだ。兄の顔を間違えるはずもない。
「ずっと、守っててくれたんだね……」
「……あれっ俺なんでこんな……山内さん? えっ泣いてる」
急に目が覚めたように、片桐がうろたえだした。状況が掴めず、腕の中の紗奈に驚き、あわあわとしている。
「助けてくれて、ありがとうございます。今、私の兄も助けに来てくれてたみたいです」
「……それって、前に話してくれたあのお兄さん?」
「そう。小学生の時に、私を庇って死んじゃった、あのお兄ちゃんです」
「じゃあ、あの電話……」
「電話?」
「うん。助けてくれ、って。あれってお兄さんだったのかな」
「ふふ。多分、そうです。お兄ちゃん、私の事大好きだから」
「……俺だって、山内さんの事、好きだよ。これからは、俺もお兄さんと一緒に、山内さんを守らせてほしい」
「片桐さん……」
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