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「野原さん、秘書課に異動なんですってね?すごいなぁ、羨ましい」
「羨ましい?」
受付業務中、隣の同僚が楽しげに話しかけてきて、一花は首をかしげた。
「だってあの秘書課でしょう?イケメンツートップに挟まれて仕事できるなんて凄いじゃない!」
「……ああ、そういうこと」
勝手にいろいろと想像をしては盛り上がる同僚と特に興味のない一花との温度差は激しく、イケメンツートップと言われてもピンとこない。
容姿端麗でテキパキと手腕を発揮する社内外から人気のある社長、柳田直己。
それを影から支える聡明な秘書、向井政宗。
そんな二人の側で仕事ができることは大変に光栄で勉強になることは間違いない。
そういう意味ではラッキーだとは思うが、同僚の言う“羨ましい”がそれを指しているわけではないことは一花もわかっていた。
一緒になって盛り上がれたらどんなに楽しいことだろうとは思う。思うのだが、まったくそんな気持ちはわき上がってこない。そういうことはとにかく苦手なのだ。
不安と期待を織り混ぜながら異動した初日であったが、いきなりいろいろなものが崩れ落ちた。
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