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◇
結局、タイムカプセルの開封式に間宮君は姿を見せなかった。
あれから10年も経っているのだから、忙しくてそれどころじゃないのかもしれないし、カプセルのこと自体、もう忘れてしまったのかもしれない。
たった1年間、同じクラスだっただけの女子との約束など憶えていないだろう。
式が終わり、当時の先生方に挨拶をして学校の正門に向かう。
グラウンドを見渡しながら、間宮君のサッカークラブが終わるのを待ち伏せした時のことを思い出す。
当時、私は彼への感情が何だったのか理解できなかった……
けれど――彼が去ってしまった後に感じたあの喪失感は……間違いなく『恋』だった。
こっそりポケットに忍ばせていたキーホルダーに手をやる。
あれから数人、付き合った人はいたけど――
彼のことが、ずっと気がかりだった。
(今、どうしてるんだろう……)
もし、今日、間宮君と逢えていたら――
私は何を話したんだろう……
「すいませーん!」
呼びかけられた声に気づくと、私の足下にサッカーボールが転がっていた。
少年は私にサッカーボールを投げてくれという意味なのか、両手を頭の上でブンブンと振っている。
(……よし!)
私は童心に帰って、思い切りボールを蹴った。
次の瞬間――私は青空を見上げていた。
ボールを蹴るつもりが足がボールに引っ掛かり、盛大に転んでしまったのだ。
急に可笑しくなって笑いが込み上げてくる。
地面に寝転がるなんて何年ぶりだろう……
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