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「だ、大丈夫ですか!」
少年のコーチらしき男性が私の手を取り、上体を起こしてくれる。
「……もしかして、瀬名?」
(えっ!?)
私のポケットから飛び出したキーホルダーを拾いあげ、あの時と同じ笑顔を彼は浮かべている。
「ど、どうして!?」
「俺、この学校のサッカーチームのコーチになったんだよ。土日だけだけど……タイムカプセルの開封式、クラブの練習試合があったから間に合わなかった……」
「し、信じられない。こんなことって……」
何を話したらいいか分からなくなる。
「実はさ……間に合っても瀬名が来てなかったら、俺、落ち込むのかな、って少し怖かったりもした……」
そう言うと彼は自分の穿いているジャージのポケットから、私が貰ったのと同じマスコットのキーホルダーを照れ笑いしながら取り出す。
「この後、少し時間ある?」
「うん」
「おしっ! じゃあ、ちょっと待ってて……」
グラウンドを駆けていく間宮君の後ろ姿に、当時の彼の姿が重なる。
私から貴方に伝えたいことが沢山ある――
上手く言葉にならないかもしれないけれど、臆病だったあの頃の私に代って。
子供の頃は特に気にも留めなかった抜けるような青空を、私は人目も気にせず両手を大きく広げて抱きしめた。
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