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私は、いつからか恥ずかしい気持ちや怒りの感情を自分自身で笑いに変え、誤魔化すようになってしまった。
ある日も私は自分の苦手なマット運動で無様に転び、自らおどけて、その場をやり過ごしていた。
体育の授業が終わり、教室に戻ろうと歩いていると、間宮君が一人で私に近づいてきた。
「瀬名……ああいうのやめろよ」
「へ?」
突然のことで訳が分からず、素っ頓狂な声を出してしまう。
「さっきのマットだよ……」
ぶっきらぼうに間宮君は言う。
「ああ……かっこ悪いの見られちゃったね。私ってどん臭いから……」
自嘲気味に笑うと、間宮君は怒ったような顔で、
「最近のお前、マジでダサいわ……」
「そんなこと? 私は前からダサダサだよ。間宮君みたいに器用じゃない人もいるんだよ〜」
私なりに傷ついていた。
間宮君は「ダサい」なんてきつい言葉を平気で言ってくるような冷たい人じゃないはずだから。
「お前、皆んなに笑われて悔しくないのかよ」
「…………」
私だって内心は頭にきたり泣きたくなったりしてる……
だけど――本当の感情を表に出してしまったら、余計に自分が惨めになってしまうような気がして、わざとおどけて自ら笑われる側を選んだのだ。
その方が精神的に楽だったから――
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