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「……え⁈ なに、せなっちムキになってんの?」
グループの子が言う。
里香ちゃんは、黙って私を睨みつけている。
「ム、ムキになってる訳じゃないよ……ただ……」
「ただ、なに?」
里香ちゃんが、そう言うと皆の眼が一斉に私に向けられる。
以前と同じガラス玉のような眼で。
「……きっと今、間宮君、辛いはずだから……」
「あ、そうか……」
里香ちゃんは納得したように机を軽く叩く。
「せなっち、前に間宮君に助けてもらってたもんね……」
「……ああ、あの自由研究の時か!」
グループの子が加勢する。
「そうそう……そっかぁ、せなっちは間宮君が好きだったんだね……私達なんかより間宮君の方が大事だよね」
子供ながらに、くだらないと思った。
「瀬名ちゃんは間宮かぁ……ふーん……」
「ち、違うの! そういうんじゃなくて……」
私は必死に否定する。
(このグループから追い出される――そしたら、また……)
瞬時に、そう考えた。
「違うって、瀬名ちゃんが好きなのは間宮君じゃないってこと?」
「……う、うん。そうだよ」
自分でも間宮君に対する感情が何なのか考えてみたことがなかった。
少し優しくされて――
「いいな」って思っていたら、今度は滅茶苦茶きついことを言われて――
「怖い」って思ったはずなのに、彼と言葉を交わせなくなってしまったことが、里香ちゃん達に責められることよりも、ずっと辛かった。
「じゃあさ……せなっち、間宮君に本当に引っ越すのか訊いてきてよ」
と言って、里香ちゃんが私の顔を覗きこむ。
「ね? 何とも思ってないなら、それくらい訊けるでしょ?」
「訊けるよね? 瀬名ちゃんは私達の親友でしょ?」
パパが言っていたことを思い出す。
本当の『親友』は軽々しく『親友』って言葉を口にしないって……
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