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放課後――私は結局、里香ちゃん達の気迫に押され、間宮君のサッカークラブが終わるのをグラウンドの片隅で待つことになった。
マット運動の授業後に言葉を交わして以来、会話らしい会話を彼とはしていなかった。
待ち伏せをしている間、鼓動が速くなっていく。
(これじゃあ、まるでバレンタインみたいじゃない……どうしよう、訊きたくない。間宮君にシカトされたら、どうすれば……)
すると、肩にタオルを掛け小脇にサッカーボールを抱えた間宮君が、こちらに向かって歩いてきた。
私は震える両手を硬く握りしめ、勢いよく間宮君の前に飛び出す。
間宮君は急に飛び出してきた私に驚きながら、
「瀬名? ど、どうした?」
と尋ねる。
「あ、あの……」
言葉が出てこない。
間宮君は周りを気にしながら、
「なに? 告白かなんか?」
と、いつか教室で見た満面の笑みで言う。
「な、なに言ってんの! ち、違うから!」
自分でも驚くほど大きな声が出る。
間宮君は私のリアクションを見て、豪快に笑う。
その笑顔に釣られて、私も思わず笑ってしまった。
「瀬名も大きい声、出るんだな……なに、千田達に何か頼まれた?」
思わず間宮君の顔を凝視する。
「やっぱり……俺の引っ越しのことだろ?」
「…………」
私は黙って頷く。
こんな時も私は臆病で、卑怯で……
できれば間宮君に言葉を繋いで欲しいと思ってしまう。
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