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「10年後、また逢おう……な? だからもう泣くな……」
彼は、そう言って去っていった。
私は今、あの日の約束を果たす為に此処へ来た。
『約束』というより……
彼は、そうするしかなかったのだと思う。
泣いている私を慰める為に――
◇
「瀬名さん……聞いてます? 」
「あ、すみません。つい懐かしくて……」
初秋の日差しは、まだ夏の終わりを惜しむように校庭のグラウンドを照りつけていた。
私達の今いる飼育小屋の前からも少しだけ少年サッカーの練習風景が見える。一定のリズムで聞こえてくる掛け声があの頃の記憶を思い起こさせた。
「えー、ではこれから、笹川小学校、第46期卒業生のタイムカプセルを開けさせて頂こうと思います……」
タイムカプセルの実行委員、同じ学年だった鈴木君が声を張り、集まった元6年生の生徒達に呼びかけた。
タイムカプセルを埋めた当時、一クラス40名、6年生は4組まであり、私は6年3組だった。
今日、タイムカプセルの開封式に参加したのは、35名。
ハガキでお知らせは届いたものの、10年も経っているのだから、住所が変更してしまっていたり、面倒くさくて参加したくないという人などがいたとしても仕方ないだろう。
鈴木君の進行により、当時の学年主任、村井先生が軽く挨拶をし、いよいよカプセルを開封することになった。
集まった大人達は思い思いの声を上げる。
中身はポリエチレンの袋に入っていたせいか、傷みなどは見られない。
「6年3組、瀬名さん……」
「はい」
「瀬名さん、いらっしゃいますか?」
「あっ、はい! います」
前の方にいた人達が私の方を一斉に振り返る。
私は昔から声が小さかったせいか、大人になった今も言葉を聞き返されることが多い。
そういえば昔、こんなことがあった……
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