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「…………」
「なぁ」
「…………」
「おーい」
「…………」
「藍沢!」
肩が叩かれるのと同時に、私の名前を呼ぶ声。
「え?有賀くん……?」
「呼ばれてるぞ」
ふと顔を上げると先生が困った表情でこちらを見ていた。どうやら今は小テストの返却が行われていたらしい。
「すみません!」
私は慌てて立ち上がると先生の元に向かった。
「どうかしたの」
いつものからかうような口ぶりではなく、神妙にそう問われた。よっぽど私が変だったのだろうか。
「……」
私は何も答えられない。何もないと答えるとそれは噓になってしまう。しかし、有賀に私の事情を話したくはないという気持ちが心を渦巻いていた。結局有賀の質問に答えることはないまま、時間だけが過ぎていった。
授業が終わるとすぐに美波が私の所へやってきた。
「冬花。大丈夫?今日なんか変だよ?冬花があんなに授業中ぼーっとしてることって珍しいし……」
「……やっぱり変だった?」
私は下手くそな笑顔を浮かべながら答えた。
私の誤魔化しに納得のいかない表情をする美波に
「後で話すよ」
と告げ、話を変えた。
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