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《僕、もうすぐご主人様に追い付くよ》
拾われて、助けられて、魔女の使い魔になって。僕は歳を取っていく。
何度目かの冬が僕の毛を厚くして、僕はご主人様の少し年下になった。
あんなに遠かった彼女の腰にも、差し出す小さな掌にも。今は手をのばせば届くようになった。
けれどご主人様は変わらない。少しだけのびた黒髪を滝のように流して、困ったように笑いかけてくれる。
僕はその笑顔が好きで、いつもご主人様の横にいた。まだまだこの関係がつづくと思えば、嬉しくてノドがゴロゴロと鳴った。
《こ、これはなんて魔法なの!?》
僕が初めて魔法で攻撃されたのは、庭先のカラスさんが新しいお歌を教えてくれた年の冬だった。
「蜜柑って言うのよー」
《みかん! それきらい、絶対ほかの子にはしちゃダメだよ!》
「あなたのお鼻にはちょっとキツいから、離れてようねー」
頼まれたってみかんとは一緒にいてやるもんか!
言われてすぐに、布団をかぶせた机にもぐりこむ。
ずっと逆撫でされてるみたいに寒い冬なのに、魔女の近くにいると不思議とポカポカになれる。これも彼女の魔法なのだろう。
いつの間にか丸くなって眠っていた僕の頭を、魔女がそっとなでた。
冬はあったかくて、ポカポカしている。それもこれも魔女のおかげなのだろう。
僕はまたひとつ、ノドをならした。
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