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《僕、ご主人様と同い年になったよ》
ご主人様と同い年。
それだけで何故だか嬉しくなって、ニャアニャアと歌ってみる。ご主人様が、初めて太陽みたいな笑顔を浮かべてくれた。
いつも困ったような、ご主人様の笑顔。太陽みたいな、ご主人様の笑顔。
どっちも好きだけれど、やっぱり太陽みたいな暖かい笑顔の方が好きだ。
ご主人様を笑顔にできる。僕の魔法は、それに違いない。
《おやおや、ついに君も魔法を覚えたようだね》
庭先のカラスさんに魔法をひろうすると、彼はじまんの真っ黒な羽を楽しそうにはばたかせた。
《有り難う、ついでに私まで愉快な気分にさせてくれたね》
《ついでじゃないよ。カラスさんも家族だもん!》
《ソイツは光栄だね、本当に君ってやつは》
カラスさんは羽でくちばしを隠して、こらえるように小さく笑う。
そして僕を見つめて、ガラス越しに頭をこすり付けた。まるでお母さんが、僕にそうしたように。
《私も、これで心置きなくいけるよ》
《どこかいくの?》
《ちょっとした散歩さ。でも私は食いしん坊だから、ポケットにうんとお菓子を詰めていこう》
まるで歌うように言って、カラスさんは一枚の羽をちぎった。
軸の白い、ひときわ大きな羽だった。それを窓のすきまに挟んで、
《これを魔女と、そして君へ。どうか君たちが魔法にかかったまま、笑顔でいられるように》
カラスさんはいってしまった。
それきり彼は、二度と庭先には現れなかった。
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