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《僕、いつの間にかご主人様を追い抜いちゃった》
庭先のカラスさんは、あれきり帰ってこなかった。
僕が彼といつも喋っていた庭先を見つめていると、ご主人様は悲しそうに「どこに行っちゃったんだろうね」と悲しく笑った。
その栗色の髪に添えられた髪飾りには、カラスさんが遺した羽があしらわれている。
《カラスさんがいってたよ。笑ってて、って》
だから僕は、また歌を歌った。あの頃よりもずいぶんと上手くなったと思う。
それでも魔女の顔がずっと悲しそうなままだったのは、何かを知っているからなんだろうな。
彼女はとても賢いから、僕にそれを伝えないでいる。
けれど僕、もう知ってるんだ。
カラスさんがどこに行ったのか、とか。
僕もいつか、そっちに行かなくちゃいけないんだってことも。
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