大好きな魔女へ

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《ご主人様……》  ご主人様が笑わなくなった。  悲しげに笑うご主人様が見ていられなくって、僕も悲しくなって。  だから笑ってほしくて、歌を歌う。  けれど彼女は、もう笑ってくれなくて、代わりにお月さまみたいな涙をこぼすようになった。  夜の空からのぞくお月さまも、きっと魔女が空に返した涙なんだろう。 「お願いだから、独りにしないで……」  眠りながら涙をこぼすご主人様の言葉を、僕はただ聞いていることしかできない。  僕の魔法も体も、もう随分と弱くなってしまったらしい。  だから代わりに、僕は震えるご主人様の頬を尻尾で撫でた。 《大丈夫だよご主人様、もうお月さまは盗まなくていいんだ。じゃなきゃ夜がおひるになっちゃう》  ご主人様が泣き止む。  子供みたいな寝息をたてて、安心したように静かにねむる。  もう夜だ。月も星も、もう返さなくていいくらいたくさん輝いている。  次に使う魔法が、きっと僕の覚える最後の魔法だ。
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