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私はがばりと起き上がると、ベッドの端に無造作に投げ置いていたメスをを引き寄せた。勢いよく包装を破ると、鋭い刃先が薄暗い室内灯を反射してきらめく。私は苦いつばを飲み込み、ワンピースの袖をまくり、ためらい傷が幾筋かこびりついた自分の手首を見つめた。
胸が1度、痛いほどどきんと跳ねた。
このまま死ねたら。
楽になるとは思わないけれど、この場所から、自分から逃げるにはこの方法しかないだろう。
本当は風呂に湯を張って切ろうと思っていたが、ここでやれるのならそれでもいい。刃先を手首に当てると、ちくっとした微かな痛みが走った。息を詰めて、細い刃先を見つめた。
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