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泉を離れるのには勇気がいった。この辺りには日影を作る木も、食べられる木の実もある。レイラが病気でさえなければ、ここを住まいにしてふたりで穏やかに暮らそうと思ったかもしれない。
「レイラ、本当に病気なのか?」
「……ごめんなさい」
謝ることなどないのに。責めるつもりはなかったが、いいんだ、とも、大丈夫だ、とも言えなかった。
鼻の奥がジンとして、顔を上げる。気の早い一番星がひとつだけ、暮れかけた青紫の空にまたたいていた。
俺たちはその夜、満天の星の下で寄り添い、久しぶりにゆっくりと眠った。
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