椚田涼司は考える

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椚田涼司は考える

 アヤと付き合いだして一年半ほどが過ぎ、だいたいのイベント事は一巡した。といってもあくまで一巡しただけであって、全てのイベントを一緒に楽しく甘い過ごせたのかと言うと、決してそうではない。夏に花火は見たけれど、春の花見もしてないし、秋に紅葉は見たけれど、冬の雪は見ていない。  昨年の冬、奇跡的に二人で過ごした前倒しのクリスマス。夢のような一夜ではあったが、雪は降っていなかった。ロマンチストで乙女脳のリョウは、ほんとうはホワイトクリスマスが良かったのになあなんて思っていた。だがしかし大阪なんて、年に一度積もるか積もらないかの地域。遠距離交際中の、ましてや職種上仕事の休みが真逆である彼らが、二人で過ごせる時に雪と遭遇できる方が奇跡に近いというもの。  昨年は年末の繁忙期にもかかわらず大阪まで出てきてくれたけれど、あれは付き合いたてのボーナスみたいなもんであって、きっと今年はないだろう。 一緒に雪を楽しむとなると、たぶんスキーかスノボにでも出かけないと無理なんじゃないか。 「行くわけないだろ」  案の定、撃沈。それとなく電話でお伺いを立ててみたら、この返事。わかっていた。アヤは寒さが大の苦手で、人混みが嫌いで、出不精だからだ。 「そんなこと言わんとさあ。あ、スノボなら教えたるで、こう見えて俺」 「ここにいても寒いのに、わざわざここより寒い所へ行く意味がわからない」 「んぅ……」  取り付く島がないとはまさにこのこと。やはりウインタースポーツはお気に召さないらしい。しぶしぶリョウが引き下がり、いつも通り週末にリョウがアヤの部屋に押しかけることになった。
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