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トニ男が前方を見てみると大きな駆動音を響かせたショベルカーがスーパーハウスのワイヤーを引っ張っていました。
ショベルカーのアームの先にはスーパーハウスを支えていたワイヤーの根先が吊るされていました。
運転していたのはトニ父です。
「お父さん!? な、一体何を?!」
「トニ男! そのまま四方のボルトを微調整するんだ! ワイヤーが長過ぎてハウスが浮かない!」
「は??!」
言われるがままトニ男は長方形の屋根を這って動き、角のボルトを調整しました。
「前方の二つだけだ! 後ろのはまだやるなよ!」
「へ、へい。OKです」
トニ男が手を挙げて合図を送るとトニ父はショベルカーのアームを上げ始めました。
「ちょー!!? ちょちょいの!!!? ちょい待てよって!!! おいこら!!」
トニ男を乗せたまま、スーパーハウスは斜めに傾き始めました。
落ちると大怪我をするリスクがあります。大変危険です!
トニ男は落ちないように、何かに掴まらなければならずとっさに掴んだのがワイヤーをとめていたボルトでした。
右指でボルトの先端をつまみ、左手で屋根全体を固定している別のボルトの一つをつまみ、かなり無理のある体勢で堪えました。
「ぐぬぬぬぬぬ!!! これはきついって!! 正気か!? 親父は正気なのかぁ!!?」
トニ男の頭にあの人の顔が浮かびました。
数々のアクション映画でスタント無しで体を張った伝説のアクションスター「ジャッキーチェン」を。
「ジャッキーでもこんな事しなかったよ! こんな! こんな乳首つまんでるようなポーズで落ちないようにする、てジャッキーでもやらねぇよって!!!」
脳内ではプロジェクトAのあの曲が流れています。
想像して思わず口から感想が出たトニ男にトニ父が安否確認をしました。
「トニ男! ……落ちるなよ?」
「無理がある!」
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