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「よしよし、いい感じだ。トニ男! 後ろの二つも調整しろ!」
そう言ってトニ父はショベルカーのアームを下ろしました。
斜めに浮いていた分、大きな物音を立てて地面に着いたスーパーハウス。
反動が伝わり、乳首ボルトをつまんで堪えていたトニ男が数センチ飛びました。
無数にあるボルトたちが飛び上がったトニ男の体を待ち受けました。
「痛い!!」
強めの指圧を受けたような痛みを感じたトニ男でしたが怪我はありません。
すぐに後方のボルトを調整します。
「できました!」
「よし! つかまってろよ!」
トニ男はすぐに姿勢を低くし、乳首をつまみました。
いいえ、ボルトをつまみました。掴まる場所が無かったのです。
スーパーハウスはゆっくりと宙に浮かび上がり、駐車場にスタンバイしていた大型トラックへ運ばれました。
その間、トニ男はアクションスターばりにスタントをこなしています。
「怖いよおー!!! なんで乗せる!? 何で乗せたまんま運ぶ?! 息子だぞ?! お前の息子だぞ!!!?」
トニ男の指先の握力は限界が近くなっていました。
「耐えろおお!!! 乳首ー!!!!」
トニ男の脳裏にあの人の顔が浮かび上がりました。
スパイ映画シリーズで長年、自身でスタントをこなしてきた甘いマスクのイケおじアクションスター「トムクルーズ」を。
「トムでも乳首つまみませんよねええ!!! こんな! こんなボルトの先摘んで耐えるなんてアクションしませんよねえーーー!!」
脳内ではトップガンの有名なあの曲が流れています。
「ちくびぃーーーーー!!!!!」
錯乱状態の中、スーパーハウスは無事にトラックの荷台へ運ばれました。
生還を果たしたトニ男は少しだけ強くなれた、そんな高揚感に包まれていたそうです。
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