#183

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#183

当然オフヴォーカーの銃口(じゅうこう)を突きつけられたエアライン。  ジャガーは何かの冗談(じょうだん)かという彼に向かって、自分はふざけていないことを伝えた。  消えてしまった仲間と、(ふたた)び無事に会えたという安堵(あんど)の空気から一転(いってん)。  看守(かんしゅ)肉片(にくへん)が飛び()った、血塗(ちま)れの場に相応(ふさわ)しい雰囲気(ふんいき)へと変わる。  「えッ!? なにしてんのジャガーッ!?」  ヴィクトリアが二人の(あいだ)に割って入ろうとしたが、(そば)にいたリーディンに羽交(はが)()めにされてしまう。  それでもヴィクトリアは無理やり抜けようともがいたが、リーディンにガッチリと(つか)まれている状態(じょうたい)では身動き一つできない。  「もうッ! リーディンまでなんなのよッ!」  「いいからじっとして。あなたが入るとややこしくなる」  「なによそれッ!? ややこしいのはジャガーとリーディンでしょッ!? なんで仲間のエアラインに銃を向けるんだよッ!」  リーディンはヴィクトリアの(さけ)びに返事をしなかった。  それは、きっと何をどう答えても、彼女が(わめ)()らすのがわかりきっているからだ。 エアラインはヴィクトリアを押さえつけているリーディンを見てから、ジャガーのほうを視線(しせん)を向ける。 「そうですか……最初から彼女を使ってジブンのことを(さぐ)らせていたんですね」 「ご名答(めいとう)。その通りだ」 ジャガーは、先ほどとは別人のような冷たい表情でいうエアラインに向かって、ニヤリと笑みを()かべる。 それからエアラインは両手を上げ、いつから自分のことを(うたが)っていたのかを(たず)ねた。 「さあねぇ。オレはただ上からの指示(しじ)通り動いただけだ。たぶん、お前の裏切(うらぎ)行為(こうい)もそうだろ?」 「食えない人だ……。あなたは出会ったときからそういう人でしたよ。だから、ずっとあなたのことが(きら)いでした」 「残念だ。オレはお前ことは結構(けっこう)気に入ってたんだぜ。なんだかんだいって一緒に(くぐ)った修羅場(しゅらば)も、両手の(ゆび)じゃ数えきれないくらいになっていたからな」 「よく言いますよ。あなたが組織の人間を信用していたことなんて一度もないでしょう。(まった)く、相変わらず口を開けば(うそ)ばかりですね」   ヴィクトリアは二人の会話を聞いて、エアラインが(てき)のスパイだったことに気が付いた。   そしてどうやらジャガーのほうは、以前から彼のことを疑っていたようだ。 おそらくリーディンがエアラインと組んでいたのも、メディスンが意図的(いとてき)にそうするようにしていたのだろう。 組織に入ったばかりで、バイオニクス共和国に(うら)みを持つ彼女なら仲間に(さそ)いやすい――。 そう考えると思っていたのだ。 「あなたにはすっかり(だま)されましたよ、リーディン。でも、共和国をよく思っていないあなたが、何故ジブンたちにつかなかったのか、その理由を聞いてもいいでしょうか?」 「たしかにアナタのいう通り、ワタシは共和国のことは大嫌いよ。でもね、メディスンは言ったわ。もし言うことを聞くなら、ストリング帝国に行かせてやるってね」 「ストリング帝国へ? 知らなかったな、あなたが帝国に行きたがっていたなんて」 「別に帝国のことだって好きじゃないわ。ただ、あの国にはワタシの大事な人がいる……。だから、帝国とコネがあるメディスンならワタシの(のぞ)みを(かな)えられるってわけ」 「なるほど、それで納得(なっとく)できました」 エアラインが両手を上げたままクスリと笑うと、ジャガーが口を開く。 「雑談(ざつだん)はその辺して、お前たちの目的を教えてもらおうか? 何故監獄(プレスリー)侵入(しんにゅう)した?」 「それよりも、どうしてジブンが組織を裏切ったのか、聞きたくないんですか?」 「悪いが興味(きょうみ)ないね。それは調べるのはオレの仕事じゃない。メディスンさんの仕事だ」 ジャガーの返事を聞いたエアラインは、(ちから)なく肩を落とすと「本当に冷たい男だ」と(つぶや)いた。 そして、すでに観念(かんねん)しているのか。 彼の所属(しょぞく)する組織――生物血清(バイオロジカル)が何故監獄(プレスリー)に来たのかを話し始める。 「ジブンたちがここへ来た目的は、ある人物を脱獄(だつごく)させるためですよ」
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